「寧々の答えを聞かせて」


 甘えだと思う。強がりだと思う。無理に前を向いて挫かれて、それでも爪先を向けた方向が辛い道ならずっと正しいと思ってきた。何かになろうとした。それでも何にもなれなかった。何かになる。模索する。惑い、恐れ、折れながら。

 私は「自分」になれるだろうか。


「…アオに謝りに行かないと」
「…あお?」

「青山聡介って男」


 伯母さんが動きを止めた。そして、張り付けたような顔で口を開く。


「…いまなんて言った?」

「え、だから謝りたい人がいて」
「そうじゃなくて名前!!」

「…青山聡介」


 その言葉に一瞬我が目を疑うように口を手で覆ってから、伯母さんは不審げに私を覗き込んできた。


「…誰からその名前聞いたの」
「え、」

「あんたが言ってる〝青山聡介〟って———」


















 四季から梅雨を引っこ抜いて夏を春とくっ付けたら、湿度の低いロサンゼルスみたいな夏が来る。

 そうだろうか、きっとそうに違いないな。そんなくだらないことに(うつつ)を抜かしていたら、私の〝オアシス〟に辿り着いた。


「まーた派手にやられたね」


 三角巾で吊った手を番台から見たアオは、やはりいつもと同じ長袖で頬杖をついていた。初めて私服姿でそこに来た私を、アオは感慨深そうに眺めてからあくまでいつものヤジを飛ばしてくる。


「素直におれの飴受け取らないからだ。おまじないありったけ、効果絶大よ。けどそれ事故じゃなさそうな、はー災難。マジ勘弁って感じだな」

「ここで死んだ時もそう思ったのか」