『―――――っ……』
いきなり飛び込んできた眩しい光に、反射的に息を詰める。
『千代?気が付いたのか?』
とたんに、左側から彬くんの焦った声が脳に刺激を与えた。
まだ覚めきれていない意識でぼんやりと見つめたのは、見覚えのない蛍光灯だった。
『千代?千代!』
彬くんの声が大きくなり、返事をしないままのわたしに我慢ができなくなったのか、
『千代っ!』
ひと際激しく呼ばれたとき、わたしは、ゆっくり、ゆっくりと、左に首を回した。
そこには、わたしを覗き込むように近付けていた彬くんの顔があった。
『…………彬くん?どうして?』
さすがに、ここがどこかの病院であることは、目覚めた直後に部屋の雰囲気で推察できた。
けれど、家族でもない彬くんがここにいるのかは分からなかった。
あの場にはいなかったわけだから、誰かが連絡したのは間違いないのだ。
では、なぜ、家族でもない、一緒に住んでるわけでもない彬くんに連絡がいったのだろう?
そんな風に不思議に感じたことが、率直に口を突いて出ていた。
『連絡をもらったからだよ。そんなことより、気分は?怪我はしてないみたいだけど、痛いところはないか?』
よほど心配してくれたのか、いつもよりもかなり早口になっていた彬くんに、わたしは『大丈夫』と即答した。
すると、
『よかった……』
わたしの返事にいくらかは安心したのだろう、彬くんはわたしの額に小さなキスを落としてから、枕元のナースコール用のインターホンを押そうと体を起こした。
『貧血で倒れたって病院から連絡があったから大慌てで来たんだけど、意識がはっきりとしてなかったから、めちゃくちゃ心配したよ』
緊張が一気に解けたように弱く微笑んだ彬くんに、わたしは『貧血?』と訝しむ声をあげた。
『え……?そう聞いたけど……?』
彬くんはインターホンに指を当てたまま、押す直前に、再び視線をわたしに戻してきた。
訝しむわたしを、訝しむように。
『誰から聞いたの?わたしを助けてくれた男の人?』
『は?男?』
彬くんは誰それ?といった感じに眉間にシワを走らせた。