車道に倒れ込む瞬間は、自然と目を閉じていった。
ああ、これでお父さんとお母さんに会える………
そんな安堵感が先頭で待っていたほどで。
なのに、それは叶わなかったのだ。
『なにやってんだ!』
そんな男の人の叫び声が聞こえたかと思ったら、突如現れた腕に、尋常でない強さで引き戻されてしまったのだから。
グッと引かれた腕ごと見知らぬ男の人の胸に抱きすくめられ、その反動で二人して歩道のアスファルトに転がって尻餅をつく。
今までの人生で一番強烈な尻餅だった。
その強打は背骨を伝い、頭の方にまで響いたようだった。
わたしは脳震盪のような衝撃に、瞬時に吐き気を催し、そのままうずくまってしまう。
『どこか打ったのか?』
男の人は体を起こし、わたしに声をかけてくるが、頭がぼんやりとして正常な受け答えができない。
『おい!しっかりしろ!』
気持ち悪い……そう訴えたくて、白濁していく意識を奮い立たせて顔を上げた。
けれど、わたしを助けた男の人の顔を認識する前に、わたしの視界は靄で縁取られるようにして狭まっていき、速やかに萎んで、最後にはぷつりと、遮断されてしまったのだった。
最後の最後、かすかに靄の隙間から見えたものは、男の人がわたしを支える腕だった。
それから、その腕の手首にある、黒い、ほくろだった………