(あき)くんとの関係も良好、大学生活も順調、わたしの日常に憂鬱な差し色が入り込む隙間なんて微塵もなかった
………はずだった。

けれど、永遠に波風立たない人生なんて、あり得なかったのだろう。
それは、なんてことはない、麗らかな春の日曜の午後、なんの前触れもなしに、足音すら立てずに近寄ってきて、急に激しくわたしの人生の扉をノックしてきたのだ。




『―――――はい?事故?』




彬くんと楽しい自宅デート中だったわたしに、両親が事故に巻き込まれたとの知らせがもたらされたのである。
わたしと彬くんが家で過ごすと知り、両親がきっと気を遣って少しの間家を空けてくれたのだ。
その両親が、事故に―――――



わたしは彬くんと一緒に、大急ぎで二人が運ばれた病院に駆け付けた。
取るものも取り敢えず、全力で急いだ。
病院前で止まったタクシーから転がり落ちるように飛び出し、支払いは彬くんに任せて、とにかく全身全霊で走って、両親のもとに………




けれど、わたしは―――――間に合わなかった。