「ねえ(なぎさ)は…さ、辛くないの?」



夕焼けの中、部活帰りで辺りに人影がないのをいいことに私は右隣りを歩いている渚に顔を向け声をかける。

中学に入学してはや半年。文化祭が近づく頃だ。



「え、急にどうしたの真帆(まほ)



こちらを向いて笑い混じりに渚が言った。

しかし私には、その瞳の奥に怯えが見えていることに気づいてしまった。



「いや…六年の頃からさ、色々あったじゃん…?」



目を見開いて固まってしまった渚に、「あっいや、何にもないならいいけどさ」と慌てて付け加える。

渚は、「そっか」とだけ言って前を向いてしまった。



(…気まずくなってしまった)



「あっあのさ、」
「実はさ…」



気まずさに耐えかねて声を出したら、見事に渚の声と重なってしまった。



「あっと真帆からどーぞ?」

「いや、渚からで。話そうとしたのどうしようもないことだし」



苦笑交じりに私は言った。



「え、そ、そう?私もそんなだけど…。
実は…さ、まだ避けられたり、しててさ、」



(やっぱりか…)



うん、と小さく頷いて続きの言葉を待つ。



「いやね?私が悪いんだよ?あの事件は私が悪かったし、私の性格もほら…ね?」

「…確かに、あの事件だけ見ればそうだけど…」



私は少し苦い顔をして地面を睨んだ。

ただ一時(いっとき)の事件を、他に同じようなことをやってた人が居るにも関わらずにずっと(ひとり)を攻めたてるのはいかがなものかと思う。