目を覆っていた手をどけて振り返ると、そこには黒を基調とした全身フリル付きの、ミニスカートに小さいシルクハットを身につけた今世紀最高峰の不細工が突っ立っていた。

「ごめんちょ〜!、洋服選びとお化粧に手間取っちゃって、時間ちょびっと遅れちゃった♡許してちょ〜」

百合絵が聞いたら迷わずハイキックで昏倒させてマウントポジションを奪うであろう発言を悪ぶれた様子もなく言ってのけると、左手はキューピーのように腰付近に当てて、右手で「ごめんちょ」を具現化したようなポーズを取り、右目を瞑ってウィンクした。

手間取ったと言っていたお化粧とやらは、オ◯Qを目指していたとしか思えないような口紅の塗り方で、頬紅は頬という範疇を超えた円形を描いていた。

「ねぇ待った?怒っちゃったりしてる〜?」
「いやいやいや、そんなことないよ!僕も今来たところだから!」
「そうなの?良かった〜♡」

木更津まで遅れて来たという事になると、二人して時間を守れていない事になるのだが、特に気にする事もなく茨は笑顔で応えた。