初めて会った時のことを思い出す。

 禄朗に捨てられ、ボロボロになって半分死んでいる状態のとき、紹介された明日美。何もかもなくしたと俯く優希をいつも励まし隣にいてくれた彼女の存在に、いつしか引きずられ、前へ足をふみだせるようになった。

 恋人、としてというより兄妹として。

 ぽつりぽつりと互いのことを話し合えるくらいになり、優希の境遇を聞いて怒りながら泣いていた。「大丈夫だよ」と肩を抱いてくれた明日美が、ふいに漏らした告白に優希は衝撃を受けた。

 明るくコロコロと笑いつらいことなんて今までなかったようにふるまい、明日美こそ結婚間近の婚約者に捨てられたのだと打ち明けてくれた時、明日美は初めて自分のために泣いた。

 誰にも話せなかった心の痛みを。何でもないようにふるまうことで自分を守ってきた明日美の必死さに、優希は心を決めたのだ。



 結婚して幸せになりたかったと泣く明日美の願いを叶えてあげたいと思った。それは報われない自分の代わりに救われてほしかった気持ちもあったのかもしれない。

 恋として好きあっていたのか、と思うと今でもわからない。お互いに利用しあったと言っても間違いじゃないし、同情も強い愛情の一つだろう。お互いを支えあう同士のような、合わせ鏡の存在。

 子供が欲しいという願いも叶えたかった。優希の代わりに、たくさんの幸せをあげたかった。だけどいつしかそれはいびつな形になり、禄朗と再び会えた時壊れた。