もうこんな時間。
真っ暗な夜道で空を見上げれば、真ん丸の月か昇っていた。
『まーた残業か? だから、防犯ブザー持てって言ったろ。とりあえず、大通りと明るい道選んで……そことそこは通るなよ』
過保護な幼なじみ、颯大の声が頭の中で響いてクスッと笑う。
もういい大人なのに、まるでお母さんみたいに世話を焼いてくれるのだ。
(大丈夫だよ、おかーさん)
そう笑った次には、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
いいかげん、独立しないと。
いつまでも、颯ちゃんに親代わりをさせておくわけにはいかない。
「もう十年だもんね。颯ちゃんが結婚しないのって、絶対私のせいだもんな」
頼りになるお兄さん。颯ちゃんとの血の繋がりはない。
ただ、当時お隣さんで、突然の事故で両親を失った私は遠縁の親戚の家に移るのを拒んだ。
結果、ほぼ関わりのなかった親戚は「仕方なく」既に成人していた颯ちゃんに私を任せ、今に至る。
「あ……っ」
空を見ながら歩いていると、道端に落ちていた何かに躓いてつんのめりそうになる。
でも、思わず声が出たのは転びそうになったからではなくて。
月光に照らされた赤い瞳に、目を奪われたからだ。
真っ暗な夜道で空を見上げれば、真ん丸の月か昇っていた。
『まーた残業か? だから、防犯ブザー持てって言ったろ。とりあえず、大通りと明るい道選んで……そことそこは通るなよ』
過保護な幼なじみ、颯大の声が頭の中で響いてクスッと笑う。
もういい大人なのに、まるでお母さんみたいに世話を焼いてくれるのだ。
(大丈夫だよ、おかーさん)
そう笑った次には、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
いいかげん、独立しないと。
いつまでも、颯ちゃんに親代わりをさせておくわけにはいかない。
「もう十年だもんね。颯ちゃんが結婚しないのって、絶対私のせいだもんな」
頼りになるお兄さん。颯ちゃんとの血の繋がりはない。
ただ、当時お隣さんで、突然の事故で両親を失った私は遠縁の親戚の家に移るのを拒んだ。
結果、ほぼ関わりのなかった親戚は「仕方なく」既に成人していた颯ちゃんに私を任せ、今に至る。
「あ……っ」
空を見ながら歩いていると、道端に落ちていた何かに躓いてつんのめりそうになる。
でも、思わず声が出たのは転びそうになったからではなくて。
月光に照らされた赤い瞳に、目を奪われたからだ。



