雨上がりには

公園につけば月の光に照らされた煇先輩がいて、さらさらとした黒い髪がぬるい風によって揺らされている。


純粋に、綺麗だと思った。


「煇先輩…」

『待ってた』


歯を見せて微笑んでくれる煇先輩はどこまでも優しくて『おかえり』温かい人。



『来ないかと思ってた』

『来てくれてありがとう』

「いえ、ちょうど家に帰ってきてたので…」

『どこか行ってたの?』

「あ、はい、兄とドライブに…」

『そうなんだ』

「カフェと、あと海に行きました!すごく綺麗でしたよ」

『いいなぁ、俺も行きたい海』



『今度一緒に行こう、2人で』



煇先輩は少し頬を赤らめてそう言った。2人で。その言葉がキュッと心にきて煇先輩の目から視線を外した。


「…そうですね、行きましょう」

『うん、約束』


小指を差し出してニカっと笑う煇先輩。いつもセンターパートに髪をセットしてるけど今は何もされてないオフな髪型に可愛い笑顔がどこか子供っぽくて、自然と口角が上がった。


「はい、約束です」


先輩の小指は細くてなんか、ゴツゴツしてた。



『よし、暑いからアイス買いに行こ』



自然と手を繋ぐ煇先輩に少し胸がドキっとする。煇先輩の手は大きくてかたい。そして必ず最初から長い指を私の短い指と絡めてくるんだ。


じっとりとした空気が体全体を包んで、クラクラと熱い、コンビニまでの距離は短いはずなのに長く感じた。



コンビニに入ると纏わりついていたぬるい空気が一気にはがれて気持ちがいい。

おでこに張り付いた前髪を整えながら煇先輩の後について行った。お菓子売り場にジュース売り場、ようやくアイスが売ってるところにたどり着いた。


『何にしよっか』

「そうですね、ん〜…」

『俺ボリボリ君にしよ』

「わ、早いですね決めるの」

『こういうのは直感で決めた方がいいんだよ』

「なるほど…」

『すぐ目についたものにしなよ』



そう言われて美味しそうにとろけるチョコレートのパッケージに目がつく。


「これにします」

『ん、花ちゃん好きそう笑』



フフッと笑う煇先輩にキュンとする。やっぱり可愛い笑顔だなぁ、キラキラしてて真っ白な心を持ってそうな感じで…。


『奢るよ』

「いえ、いいです…!私お金持ってるんで、」

『だーめー、俺が連れてきたんだから』

「でも…」

『それ以上何かいうとキスするよ』

「え」



突然のキス宣言になんていえばいいのか分からず体が固まる。


『なーんてね』


ニッと歯を見せて笑う煇先輩。先輩はいつも調子が良くなるとそんな冗談をお構いなしな言うのだ。私が持っていたチョコアイスを手に取るとお会計をパパッと済ませると、


『ほら、行くよ』


とポケットに片方の手を入れてもう片方の手は私の手を待っていた。



先輩の手をとると気のせいか、先輩の耳が赤い気がする。


「ありがとうございます…」

『どういたしまして〜』


買ってもらったチョコアイスを開けて一口かじる。外が暑いからなのか、チョコアイスはもう溶け始めていた。

『美味しいね』

「はい」


また2人手を繋いできた道を戻った。