気付けば眠っていて
〈チビ、降りろ〉とお兄ちゃんの低い声によって起こされた。
着いたところは夕焼けが燃えていて、キラキラと光っている海だった。人はほとんどいない。
〈ここ、俺が苦しくなったら1人で来る場所〉
そう言ってスタスタと堤防の方に歩いていくお兄ちゃんの後ろを鼻をすすりながら追いかけた。
お兄ちゃんは何も聞き出そうとせずに、私の心が辛い時、いつも隣にいてくれて私が話すのを待つんだ。
よっこいせーっと声を出しながら腰を下ろすお兄ちゃんの横に座ると私の頭を撫でてこう言った。
〈苦しいのはここに置いてけ、そしたら楽になっから〉
「うん、でもどうやって、」
〈そんなん適当に叫べばいいんじゃねーの〉
「お兄ちゃんはいつもそうしてるの?」
〈ああ、してる、いつもあいつへの嫉妬ここに置いて…る…〉
と語尾がだんだん小さくなって照れてるお兄ちゃんは少し可愛いと思ってしまった。なんだかお兄ちゃんの彼女さんは、幸せ者だな…。と心が少し温かくなる。
〈何があったか知らねーけど、お前はお前なりに何かしら頑張ったんじゃねーの。〉
〈俺はいいんだよ、ほら、叫べば〉
トントンと背中を叩いてくるお兄ちゃんに立ち上がらされた。
〈もうやなことぜーんぶ海に捨てちまえ〉
「…うん……!」
私の今の心の重みは空先輩への恋心。
「空先輩のばか!鈍感!そんなにも優しくしないでよ!別にかっこいいだけだし空先輩だなんて!!このおたんこなす!さようなら!」
と叫べば横でケラケラと笑うお兄ちゃん。
〈花、ボロカスに言い過ぎ笑〉
「はぁ、はぁ、……空先輩いないからいいもん…」
心なしか気分が軽くなった気がする。
〈よし、帰るか〉
「うん、お兄ちゃんありがとう」
〈ん〉
「あ、でも私ちょっと海で遊びたい」
と言っても無視して先に帰ろうとするから後ろから背中に抱きついてやった。
〈……うぇっ……だる……〉
嫌そうな声を出すけど顔はニマニマしてて嬉しそうだ。世界一のお兄ちゃんを与えてくれた神様に感謝した。
