あの日、小猫と出会ったから

「ジェイミー、かわいそう……」
 刑務官に手を取られた。持ち上げられて台の上に置かれると同時に、温かいものが触れた。恐る恐るそれを辿る。分厚いアクリル板に開いた小さな窓から両手を差し伸べ、シェリフが俺に触れてくれていた。両手で俺の手をつつみ、優しくさすってくれた。
 ……アタタカイ。
「ジェイミー、手が冷たいね。これ、手錠の痕? 痛くない?」
 真冬の間外してもらえなかった手錠のせいで、凍傷になった痕の事だろうか。
「……、……」
 何か言おうとするのに、声が出ない。氷壁が邪魔をする。シェリフは俺の手を握ってくれた。
 ……ああ、温かい。
「もう大丈夫だよ。あと半年服役したら、この手錠も外してもらえるからね。ジェイミーがここを出る時、ダグラス叔父さんと一緒に僕も迎えに来るよ。だから――」
 言葉に詰まった後、シェリフは涙声で続けた。
「だから、それまで頑張って……」
 しばらく沈黙が続いた。誰の声も動きも聞こえない。小猫の啜り泣きだけがはっきり聞こえてくる。
 やがて、俺の何も見えていない目から温かい雫が静かに溢れてきた。悲しいのか、嬉しいのか、よく分からない。分かるのは、それが雪解け水だということ。