あの日、小猫と出会ったから

『バケモノ ハヤク クタバレ』
 その夜、俺はなけなしの力を振り絞って体を起こした。
 アイは、シェリフがレシュノルティアへ連れて行ってくれた。でかいお屋敷で、快適な生活を送れているだろう。もう、俺の事なんか忘れてる。
 シェリフだって、きっと待ってなんかいない。一国の王子様からしたら、俺みたいな野良猫一匹野たれ死のうが、痛くも痒くもないはずだ。俺なんか居なくても、友達は沢山居るだろう。
『ハヤク、クタバレ』
 石壁に頭を叩き付けた。痛みは感じない。衝撃を心地よくすら感じた。
 死にたかった訳じゃ無い。何と無くそうしていた。意味なんか無い。理由なんか、無い。
 何度か繰り返すうちに、額から生温いものが伝ってきた。そのままずるりと崩れ落ちて、起き上がれなくなった。
 眠い、と思った。寒い、と呟いた。誰かが大声で叫んでいるのを遠くに聞きながら、意識を手放し――
「なあ、シェリフ……ちゃんと、親に話せたか……?」
 それが、数週間後に目を覚ました俺の第一声だったという。