あの日、小猫と出会ったから

「……夢みたいな時間だったな」
 シェリフ達と別れてからずっと、俺はホテルから少し離れたこの場所に突っ立って空を見上げていた。そろそろ帰ろうと思うのに、何となく足が動かなかった。
『出会えて良かった』
『ジェイミーは僕の友達』
『とっても楽しかったよ』
 楽しかったのは、そして助けられたのは俺の方だ。
 ようやくその場から動き出した俺は、ゆっくり歩きながら、アークさんに渡された封書を開いた。一枚の紙幣と、短い言葉。
『シェリフ様を助けていただいた御礼です』
「はは、生真面目なアークさんらしいや」
 もう一枚の紙には住所が書いてあり、シェリフの為に手紙書けよ、との文面が添えられている。やはり騎士殿はシェリフ様一筋らしい。王子に直接は送れないからか、もしくは検閲の為か、宛先はアークさん付けになっている。
「……あれ?」
 俺は立ち止まった。
 おかしいな、文字が歪んで見える。とうとう左目にガタが来たか。いや、ずっと空を見てたから目が乾いたのかもしれない。うん、きっとそうだ。だから、泣いてる訳じゃない。
 なんて、バカみたいな言い訳。本当は、小猫や相棒と別れた事が寂しかったから。友達と呼べる彼等と、二度と会う事は無いから……。
 穏やかな風が吹いた。陽が傾き、西の空が夕焼けの準備を始める。ぐいと涙を拭って、俺は顔を上げた。
『このままでいいのか?』
 いいわけない。俺は、変わりたい。
 そのための、最初の一歩を踏み出そう。本当の事を話して、嘘を付いていた事を謝る。大将に。信じてくれてる人に。
 ポケットから眼帯の布を取り出し、俺は大将の店へ向かった。