あの日、小猫と出会ったから

「なあ」
 タメでいいって言われたし、言いたいこと言ってみる。
「どうして、それを俺に聞く?」
 怪訝そうな顔をしてナイジェルは言葉を返す。
「聞かれたくない理由でもあるのか」
「そうじゃない。ただどうして、まずシェリフに聞かないのかって」
「シェリフに?」
 なぜそうする必要があるのかと言いたげな口ぶりに、シェリフの泣き顔が過ぎった。
「あいつ、アークさんたちに、何があったか自分に聞いてくれないって泣いてた。だったら余計、兄貴には他人の俺じゃなくて、自分に聞いて欲しいんじゃないか」
「何だ、それは」
 小声で呟き、ナイジェルは表情を変えずに目を伏せた。苛立っているのか、右手が強く握られている。
「……あいつが何を考えているのか、僕には分からない」
 冷静な表情の下に隠れた感情が、不満そうな声に表れて垣間見えた。
「聞いて欲しいなら、自分から話せばいい。尋ねられたことにきちんと答えればいい。なのに、いつもヘラヘラして、我が儘言って。勝手な事ばかりして周りを困らせておいて、肝心な事はだんまり。叱れば泣きに逃げる」
「ふーん」
 あいつ、兄貴の目にそんな風に映ってんのか。まあ、シェリフは肝心な事にはだんまりを決め込んでたし、何となく分かる。それに、ナイジェルはいかにも真面目で堅物って感じだもんな。勝手な印象だけど。
『僕の話を聞いてくれない』
『肝心な事はだんまり』
「なるほどね……」
 俺の考えが正しいかは分からない。何を思っているか、正確な所は本人にしか分からない。ただ、小猫は思った以上に複雑な奴だということは分かった。確かに、言動が矛盾しているようにも思える。真面目で理論的な兄貴には、理解し難いかもしれない。