あの日、小猫と出会ったから

 何日も続いた長雨がようやく上がり、青空が白雲の間から顔を覗かせた。
 ミルクに浸したパンの耳を平らげた後、夜行性のアイは朝寝を決め込んだ。いや、そろそろ昼寝と言うべき時間か。
 気持ち良さそうに丸くなるアイを横目に、俺は毎晩聞こえる心の声を無視して仕事の為に街へと向かった。そろそろ本気で営業しないと、明日から晩飯抜きかも知れない。
 雨のせいで、川が増水していた。流れがいつもより早く、荒っぽい。海へ海へと先を争っているみたいだ。
 俺はいつものように橋を渡り始めて、ふと立ち止まった。
 橋の上に、誰か居た。ちっこいから、多分子どもだ。さりげなく観察しながら歩いていく。
 その子は橋の上で、空を見上げていた。口元が動いてるから、独り言でも言ってんだろう。しかし、見慣れない顔だ。肌は白いし、着てる服もなんか高そう。はっきり言って、ここアストランティアの下街の景色にそぐわない。
 ……親とはぐれた良家のお坊ちゃんか。
 俺は内心にんまりした。良いカモに出来るかも知れない。迷子の所を保護しましたよって連れて帰れば、礼の一つや二ついただけるかもしれないし、高そうなあのボタンを上手くかっさらえば、一食の足しになるかもしれない。出来れば、安眠の為にも前者の方法で稼ぎたい。