三十分後、エディスさんたちが言うところの『変身』を遂げた俺は、王太子様が泊まっていらっしゃる部屋に、一人ぽつねんと佇んでいた。
ホテルの一室というより、家だ。しかも天井が高い。三人掛けのソファーが小道具に思える位、広い。なんか、落ち着かない。我が家の狭さが恋しい。
ぼけっと突っ立ってるのもなんだし、と思ってソファーの端っこに腰掛けた。右斜めにある鏡に自分が映っている。
「うわー、誰だよお前」
確かに変身している。服装一つ、髪型一つで、人はこうも変わるものなのか。
『お似合いですよ』
薄紅の花みたいに笑んだ彼女が、鏡に浮かんで消えた。|心(しん)の辺りが微かな熱を持つ。
『その……手馴れてますね』
そう言うと、彼女はほんの少し頬を染めて微笑んだ。
『将来の為、手に職を付けるようにと王太子様が仰ってくださったんです。王宮に上がった四年前から城内の理髪師に師事し、今では下働きの方の理髪を任せられています』
『そうなんですか。お若いのに、すごいですね』
見た目俺と変わらない歳に見えるのに、もう宮仕えしているなんて。
彼女の事を評した『お若いのにすごい』という言葉を王太子の事と受け取ったらしく、リサさんは小さく笑ってこう言った。
『王太子様は一見冷たい雰囲気をお持ちですが、本当は心優しいお方なんです。無愛想な話し方をなさる時もあるので、誤解されがちのようですが』
シナモン色の瞳が微かに翳った。あ、と直感が呟いた。
『直接お話しになれば、きっとお分かり頂けると思います。王太子様がどれほど立派な方で、慈愛深い御性格かを』
笑んでいる口元とは真逆に、切なさを浮かべた眼差し。
……彼女は、恋してるんだ。あのクールで理論的な王太子に。
ホテルの一室というより、家だ。しかも天井が高い。三人掛けのソファーが小道具に思える位、広い。なんか、落ち着かない。我が家の狭さが恋しい。
ぼけっと突っ立ってるのもなんだし、と思ってソファーの端っこに腰掛けた。右斜めにある鏡に自分が映っている。
「うわー、誰だよお前」
確かに変身している。服装一つ、髪型一つで、人はこうも変わるものなのか。
『お似合いですよ』
薄紅の花みたいに笑んだ彼女が、鏡に浮かんで消えた。|心(しん)の辺りが微かな熱を持つ。
『その……手馴れてますね』
そう言うと、彼女はほんの少し頬を染めて微笑んだ。
『将来の為、手に職を付けるようにと王太子様が仰ってくださったんです。王宮に上がった四年前から城内の理髪師に師事し、今では下働きの方の理髪を任せられています』
『そうなんですか。お若いのに、すごいですね』
見た目俺と変わらない歳に見えるのに、もう宮仕えしているなんて。
彼女の事を評した『お若いのにすごい』という言葉を王太子の事と受け取ったらしく、リサさんは小さく笑ってこう言った。
『王太子様は一見冷たい雰囲気をお持ちですが、本当は心優しいお方なんです。無愛想な話し方をなさる時もあるので、誤解されがちのようですが』
シナモン色の瞳が微かに翳った。あ、と直感が呟いた。
『直接お話しになれば、きっとお分かり頂けると思います。王太子様がどれほど立派な方で、慈愛深い御性格かを』
笑んでいる口元とは真逆に、切なさを浮かべた眼差し。
……彼女は、恋してるんだ。あのクールで理論的な王太子に。



