あの日、小猫と出会ったから

「それで、あの人は誰なんだ?」
 感動的な仲直りの後、兄貴、いやナイジェル王太子殿下は俺の事をシェリフに尋ねた。
「ジェイミーはね……あ、ジェイミー帰っちゃダメ!」
 仲直りを見届けたからこっそり帰ろう、としていた俺の手を掴まえて、シェリフは兄貴に俺を紹介した。
「この人は、僕のこと助けてくれたの。ここを探して、僕をここまで連れて来てくれたの。僕のね、お友達なの!」
 シェリフは俺を見上げて同意を求める。
「ね、そうだよね、ジェイミー」
 嘘つけ。お前、ここの事覚えてただろ。俺が探したなんて嘘っぱちで、自分の足でここに辿り着いただろうが。
 と思いつつ、
「はい、殿下」
 騎士殿の視線が怖くて素直に相槌を打った。
 何だろう。兄貴と仲直りしたくせに、微妙な嘘をついてるシェリフが妙に気になった。単に俺を庇ってくれてるだけかもしれない。だけど――
『僕なんか要らないんでしょ?』
『みんな、僕なんか要らないんだもん』
『僕は、出来損ないなの』
 ……この小猫は、嘘の下に何を隠している?
 ナイジェル殿下は俺を正面から見据えて尋ねた。
「お名前は」
 うわー、さすが王太子。まだ若いのに、声にも佇まいにも、なんとも言えない貫禄がある。
「……お名前は」
 先と違って軽く苛立ちを含んだ声が聞こえ、我に返った。
「ジェイミー・アトラスです」
「アトラスさん」
 一度小さく繰り返してから、兄貴は俺にぺこりと頭を下げた。
「シェリフを保護して送り届けて頂き、ありがとうございます」
 いや、ちょっと待ってくれ。そんな、お偉いさんに頭下げられても困る。なんて答えたらいいか分からない。どういたしましては、敬語でなんて言うんだ?
 シェリフは兄貴の腕にぎゅうとしがみついた。