「さて、今日は兄貴のとこに帰る日だぞ。昼飯食ったら出発するからな」
俺がそう言うなり、さっきまでけらけら笑っていたリフは途端に表情を硬くした。
おいおい、そんな露骨に嫌な顔するなよ。兄貴可哀想だろ。いつまでここに居る気なんだ、お前。そろそろホームシックになれよ。
「最初から言ってあっただろ。『明日は兄貴のとこに送ってく』って」
リフは返事をせずに深く俯いた。幼い横顔には帰りたくないと書いてある。俺は溜息をついて奴の頭をぽんと撫でた。
「あのな、リフ。何があったか詳しくは知らないけど、一度は兄貴のとこに帰らなきゃ駄目だぞ」
「……どうして」
小声だが妙に切り口上に尋ねてくる。
「どうしてって、そりゃ、今頃兄貴はお前の事心配して」
「僕の事、邪魔だって言ってたのに?」
顔を上げずに反論してきた。天然なくせに、強情っ張りらしい。
「じゃあ何だ? お前、一生ここで暮らす気か」
「ジェイミーが良いって言ってくれるならそうする」
顔を上げたリフは、縋るような眼をしていた。その瞳を直視して、俺は言うべき言葉を返す。
「それは俺じゃなくて、自分の家族に聞くべきだろ」
小猫は一瞬目を見開き、気まずそうに目を逸らした。大きな瞳がみるみる潤んでいく。
「それが嫌なら、何があったか全部正直に話してみろ。それで俺が納得出来たら、考えてやらないことも無い」
リフは黙っている。言いたくないんだろう。思えば出会った時から、肝心な問いにはだんまりを決め込んだりはぐらかしたりしていた。
よしんば話してもらった所で、簡単に許可なんかしない。一緒に暮らせば楽しいと思う。正直、居てほしい気持ちもある。でも、リフの事を思えばこそ、流されてはいけない。奴は俺なんかと一緒に居てはいけない。
「先ずは一度戻って、兄貴や親と話してみろ。勇気出してしっかり向き合え。黙ってちゃ何にも伝わらない。お前の気持ち全部ぶちまけて、相手の話もちゃんと聞いて、それでも駄目だったらここに帰って来い」
「…………」
それでもリフは頷かない。どんだけ頑固なんだ。
アイが押入れに飛び乗り、布団の上で丸くなる。小猫は俯いたまま微動だにしない。
一体どうすりゃ良い。いっそ留置所行き覚悟で、首根っこ掴んで交番に連れてくか。
「……の」
ぽつりと、リフが口を開いた。
俺がそう言うなり、さっきまでけらけら笑っていたリフは途端に表情を硬くした。
おいおい、そんな露骨に嫌な顔するなよ。兄貴可哀想だろ。いつまでここに居る気なんだ、お前。そろそろホームシックになれよ。
「最初から言ってあっただろ。『明日は兄貴のとこに送ってく』って」
リフは返事をせずに深く俯いた。幼い横顔には帰りたくないと書いてある。俺は溜息をついて奴の頭をぽんと撫でた。
「あのな、リフ。何があったか詳しくは知らないけど、一度は兄貴のとこに帰らなきゃ駄目だぞ」
「……どうして」
小声だが妙に切り口上に尋ねてくる。
「どうしてって、そりゃ、今頃兄貴はお前の事心配して」
「僕の事、邪魔だって言ってたのに?」
顔を上げずに反論してきた。天然なくせに、強情っ張りらしい。
「じゃあ何だ? お前、一生ここで暮らす気か」
「ジェイミーが良いって言ってくれるならそうする」
顔を上げたリフは、縋るような眼をしていた。その瞳を直視して、俺は言うべき言葉を返す。
「それは俺じゃなくて、自分の家族に聞くべきだろ」
小猫は一瞬目を見開き、気まずそうに目を逸らした。大きな瞳がみるみる潤んでいく。
「それが嫌なら、何があったか全部正直に話してみろ。それで俺が納得出来たら、考えてやらないことも無い」
リフは黙っている。言いたくないんだろう。思えば出会った時から、肝心な問いにはだんまりを決め込んだりはぐらかしたりしていた。
よしんば話してもらった所で、簡単に許可なんかしない。一緒に暮らせば楽しいと思う。正直、居てほしい気持ちもある。でも、リフの事を思えばこそ、流されてはいけない。奴は俺なんかと一緒に居てはいけない。
「先ずは一度戻って、兄貴や親と話してみろ。勇気出してしっかり向き合え。黙ってちゃ何にも伝わらない。お前の気持ち全部ぶちまけて、相手の話もちゃんと聞いて、それでも駄目だったらここに帰って来い」
「…………」
それでもリフは頷かない。どんだけ頑固なんだ。
アイが押入れに飛び乗り、布団の上で丸くなる。小猫は俯いたまま微動だにしない。
一体どうすりゃ良い。いっそ留置所行き覚悟で、首根っこ掴んで交番に連れてくか。
「……の」
ぽつりと、リフが口を開いた。



