あの日、小猫と出会ったから



 目が覚めると、隣にリフは居なかった。
 夢、だったのだろうか。そう思って、周りを見回す。雨は上がったようだ。寝ぼけて霞んでいる視界の中に、小猫の姿を見つけた。
「おはよう、ジェイミー!」
 リフは元気に挨拶する。棚の上にある飲み水用の盥から水を飲んでいたらしく、柄杓が手に握られている。小さく口を開けて寝ていたから、喉が渇いたんだろう。
「おはよう、リフ。起きるの早い……」
 次の瞬間、何が起きているのか理解した。
「だああぁ!」
 どでかい声を出して俺は飛び起きた。
「お、お前、何飲んでんだ!」
 小猫は悪びれた風もなく、ニコニコ顔で答える。
「だって昨日、ジェイミーが飲んでたから。どんな味するのかなって気になったの」
「気になったの、じゃない! これは」
「普通のお水だね。僕に飲ませてくれないから、お酒なのかなって思ってた」
「俺は未成年だよ! ってか、腹壊すぞ! 絶対壊すぞ! お前、雨水なんか飲んだこと無いだろ!」
「うん、初めて」
 リフは柄杓に残った雨水を飲もうとする。俺は慌てて取り上げて、隣にあるボトルを突きつけた。
「お前の! 水は! こっちのボトルだ! ったく、何のために水買ったと思ってんだよ」
 正確にはサービスしてもらったのだが。
 押し付けられたボトルを抱えて、リフは俺を見上げる。
「どうして、ジェイミーが飲んでる水を僕が飲んじゃいけないの?」
「当たり前だろ! お前と俺は育ちが違うんだ!」
「意味分かんないよ」
「だから、お前はちゃんとした家の子で、俺は言うなれば社会の最底辺――」
 それ以上言葉を継げなかった。一点の濁りも無い真っ直ぐな眼に射抜かれ、一瞬怯んだ。
 リフはもう一度俺に問う。
「どうして、いけないの? 同じ、人間でしょ?」
 どうして、何だろう。同じ人間なのに――