ギクリとする。大将から表情が見えないように、さりげなく怪我をさすったりしながら相槌をうつ。
「へえ、怖いなぁ」
「ま、昨今の不景気の影響だろうな。人様の物をくすねる根性が気に入らんが」
「全くだね」
遠のいた痛みが戻ってくる。傷のではなく、胸の奥の。
本当に、本当にこのままで良いのか? 信じてくれてるこの人を、このまま騙し続けるのか?
「お前は偉いぞ、よく頑張って」
大将は褒めてくれる。胸がさらに痛むと同時に、俺の中で見えない扉が小さく開いた。
大将になら。信じてくれてるこの人になら、明かせるかもしれない。この人なら、本当の俺を認めてくれるかもしれない……。
「……大将」
「ん?」
「大将は、オッドアイってどう思う?」
いきなりな質問に、大将は怪訝そうな顔をした。内心緊張しながら、さり気無さを装う。
「いや、最近そういう猫が懐いて来てさ。珍しいから、オッドアイってみんなどう思うのかなって」
「気味が悪いな」
さらりと言われた短い言葉が、心臓のど真ん中に突き刺さった。開きかけた扉が、音もなく閉まる。
「そんな猫がうちに来たら叩き出す。化け物に寄り付かれたらロクなことにならない」
「そっか。昔からそういうよね」
オッドアイは、化け物。寄り付かれたらロクなことにならない……。
『あっち行け、化け猫!』
『あの子と目を合わせちゃダメよ。絶対悪いことが起きるから』
『怖いよねぇ。シェリーの骨折も、あの子と目があったせいなんでしょ?』
俺は何を期待していたんだろう。十分、分かっていたはずなのに。
アイも俺も、みんなにとっては化け物でしかない。本当の姿を晒したら最後、嫌われる。避けられる。だから、隠すしかない。嘘をつくしか、ない。
リフのために頼んだ水を袋に入れた後、大将はいつも通りパンのミミをおまけしてくれた。
「へえ、怖いなぁ」
「ま、昨今の不景気の影響だろうな。人様の物をくすねる根性が気に入らんが」
「全くだね」
遠のいた痛みが戻ってくる。傷のではなく、胸の奥の。
本当に、本当にこのままで良いのか? 信じてくれてるこの人を、このまま騙し続けるのか?
「お前は偉いぞ、よく頑張って」
大将は褒めてくれる。胸がさらに痛むと同時に、俺の中で見えない扉が小さく開いた。
大将になら。信じてくれてるこの人になら、明かせるかもしれない。この人なら、本当の俺を認めてくれるかもしれない……。
「……大将」
「ん?」
「大将は、オッドアイってどう思う?」
いきなりな質問に、大将は怪訝そうな顔をした。内心緊張しながら、さり気無さを装う。
「いや、最近そういう猫が懐いて来てさ。珍しいから、オッドアイってみんなどう思うのかなって」
「気味が悪いな」
さらりと言われた短い言葉が、心臓のど真ん中に突き刺さった。開きかけた扉が、音もなく閉まる。
「そんな猫がうちに来たら叩き出す。化け物に寄り付かれたらロクなことにならない」
「そっか。昔からそういうよね」
オッドアイは、化け物。寄り付かれたらロクなことにならない……。
『あっち行け、化け猫!』
『あの子と目を合わせちゃダメよ。絶対悪いことが起きるから』
『怖いよねぇ。シェリーの骨折も、あの子と目があったせいなんでしょ?』
俺は何を期待していたんだろう。十分、分かっていたはずなのに。
アイも俺も、みんなにとっては化け物でしかない。本当の姿を晒したら最後、嫌われる。避けられる。だから、隠すしかない。嘘をつくしか、ない。
リフのために頼んだ水を袋に入れた後、大将はいつも通りパンのミミをおまけしてくれた。



