「穂希達、うるさい」
「うわっ、酷え!」
「それより、鍵開けろよ」
一気に騒がしくなったなって思いながら、私は少し笑った。
「そういえば、明日スポーツテストあるよな!」
料理を作り終わって、食卓に並べていた時、上原先輩がそんなことを言い出した。
「由妃ちゃん、そのこと知ってる?」
「はい、知ってますよ」
「おっ、さすが!」
そして、上原先輩はニヤリと笑い、内緒話でもするように耳に顔を近づけてきた。
「由妃ちゃんさ、聖一が本気で走ってる姿見たくない?」
「はい、見たいです!」
「おっ、即答か!なら、聖一にこう言ってみなよ!『聖君が本気出してる姿見たいな』って。こんな感じで言ったら、絶対あいつ本気出すから!」
それ言ったら、本当に聖君が本気出してくれるのかな……?
聖君の無気力さは昔からなのに……
「穂希、近すぎ。由妃から離れろ」
その聖君から急に上原先輩から離された。
「聖君……?」
「聖一、まだ付き合ってないのに独占欲強すぎだろ!」
「うるさい」
呆れたような上原先輩に、また軽く暴言を吐いた。
えっと、とりあえず、言ってみようかな……