黎は無表情。
穂希は愛想よくにこっと笑って手を振る。
霖はちょっと疲れ気味に手を振る。
最初の女の子達の反応はまだマシだけど、様付けで呼んでくるのはやめてほしい。
どっかのアイドルじゃあるまいし。
長い道のりだなと思いながら、軽くため息をついた。
理事長室にたどり着いて、ぐったりしつつ中に入ると……
「お疲れ。大変だったみたいだね」
理事長先生がこっちに笑顔を向けてきた。
「用件は何ですか?」
とっとと終わらせて、戻りたい。
「編入生が来たことは噂で知ってるだろう?」
「はい」
「知ってます」
それそれが頷いた。
その話はもう有名な話だ。
「その編入生が女の子なんだが、女子寮に空きがなくてね。君達、特別寮に入れてもらいたいんだ」
女の子を俺達の寮に?
「それはさすがに……」
「俺はできれば嫌です」
「俺は全然いいですよ!」
「僕もいいです」
俺と黎は反対で、穂希と霖は賛成。
意見が真っ二つに割れた。
「上原君と神無月君はいいみたいだね。皇君、冴木君、お願いだ。いいと言ってくれ。そうでないと、その子は寮に入れないんだ」
困ったような顔の理事長先生。
俺と黎は顔を見合わせたけど、どちらからともなく頷いた。
「分かりました」
「さっきの発言取り消します」
「そうか、それはよかった。じゃあ、これで話は終わりだ。もく帰ってもいいよ。でも、放課後また理事長室に来てくれ。自己紹介してもらうから」



