「えッ!?嘘ッ!?
 そうなのッ!?」

聞き間違いだと思い
ビールを飲むことも後回しにして
氷彗の彼女事情に食いついてしまった。

これには本人も少々困った様子だ。

「そんなに驚くこと?
 別に普通でしょ」

「《《だって》》氷彗だよ!?
 誰にも興味がないのかと思った」

「”だって”の意味がわかんない。
 俺を何だと思ってんのさ」

『まったく…』と言いながら
食事の手は止まらない。

「氷彗に彼がいたなんて…
 えッ、でも待って!?
 どんな人がタイプなの!?」

私は私で興奮が止まらない。

「どんなって…」

彼は一言そう呟いたかと思うと
なぜか私の目をジッと見つめてくる。

「な…なに…?」

普段ほとんど人の目を見て話す事なんてない彼が
急に真剣に見てくるから、こっちが思わずドキッとしてしまう。

「…なんでもない」

私の”ドキッ”がバレたのか
プイッと目線を逸らされ
結局、何が言いたかったのかわからないまま。

お疲れ様会の乾杯も
2人とも缶ビール2本を開けて
外のちょっと冷たくなってきた風が心地良く思えるくらい
ほろ酔い気分になってきた頃。

駐車スペースに向かって走ってくる1台の車のヘッドライトが、私達のいるバルコニーから見えた。

「壱琉、帰ってきたみたい!
 アイツも誘って飲み直そッ!」

迎えに行こうと席を立ち
部屋に戻ろうとしたのだけど――――