目が泳ぎ『それは、その…』と核心に触れず
有耶無耶な応答で流そうとする彼にイライラが増す。

「アンタじゃ(らち)が明かない!
 いいから上を呼んできて!」

自分で言うのもアレだけど
もうほぼ極悪級のクレーマーモンスターだ。

私の勢いに押された彼は
恐怖でオドオドしながら
慌ててスタッフルームに続く扉から逃げていく。

これは訴えられるレベルなんじゃ…と頭の片隅でわかっているけれど、今は自身の死活問題を解決するのが先。

上司を連れて戻ってくるまで落ち着かない私は
ソワソワしながら店内を行ったり来たり。
感じるのは監視カメラの視線だけ。

「蓮見様、いかがなさいましたかッ!?」

慌てた様子でサササ…と駆け足で奥の部屋から戻ってきたのは、先程の若造…でなく
60代くらいのたぶんこの店舗の”長”だろう。
困惑しているのは見てわかる。

「立ち退きなんて急すぎます。
 追い出して行き場を奪うって事は
 それなりの保障があるんでしょうね」

腕を組み、鼻息荒めに脅しの言葉で金銭を要求する私は、やはりモンスターだ。

「お、おっしゃる通りです、よね。
 今後の事については大家である月影様とも話し合っていまして…金銭面の保障はあるかと思いますので…あの、もう少しお待ち頂きたくて…」

なんですって?