ついこの前まで住んでいたアパートは
梅雨の時期は必ずと言って良いほど雨漏りして。
配線がイカれて停電になった事も暫しあったりもしたけれど、それほど気にしてはいなかった。
それが《《慣れ》》なのかしれないが…。

「いい大人が
 なに乙女みたいなこと言ってんだよ」

「うるさいな。
 《《乙女》》は余計です」

もうそんな年齢じゃない事くらいわかっていますと加えて言ってやった。

それに私じゃなくたって怖いと思いますけどね!

初めて来た家で1週間。
まさか今日そんな初体験をするかもしれないなんて、脅し以外ないでしょうに。

「この家はソーラーパネルだから
 少しなら非常時用に電気は使える。
 その設定だけはやっておけよ」

「はッ!?
 それどうやるの!?」

『知らない』と声をあげたところで
彼に手応えなんてあるワケもなく
電子タバコを吸いながら
食器棚の引き出しから何やら取り出すと
バサッと無造作にテーブルへと置いた。

見ると
どうやらそれはソーラーパネルを取り付けた時の
説明書…みたいな資料。
なんでこんな大事なモノを
そんなところに閉まっているのだろうか。

「それで確認しておけ」

「んな適当な…」

開いて1ページ1ページに目を通すも
素人には何が何やら…。
解読には時間が掛かりそうな気がする。