軽量鉄骨造の2階建ての角部屋が私の生活住居。
6部屋あるのに他の住人は老夫婦のみ。
築年数の古さもさる事ながら
外観は手入れされていない草木に覆われた廃墟寸前状態。

本当に人が住んでいるのか?
人じゃないモノが憑いているんじゃないか?と
度々聞こえてくる隣人の噂話には、もう慣れた。

なぜ私がこんな所に住んでいるのかと。
それは間違いなく家賃の安さだ。

女の1人暮らし、契約社員として働いている身としては
出費は限りなく少ないほうが良いに決まっている。
そこで見つけたこの物件。
駅から10分圏内で家賃3万円は魅力的ってわけ。

それに見た目ほど悪くないところもある。
部屋の中はリフォームをしてくれたから壁や床は綺麗だし
家電も新しいのを準備までしてあって住み心地は普通だと思う。

職を失った後は
この安い家賃ですら支払うのが苦しくなりそうだけど。

「あれ…もう更新月だっけ」

玄関のドア横に備え付けられている立て付けの悪い郵便受けをギィギィと開け、幾つか来ている封筒の中から”親展”と書かれた不動産管理会社からの書類を見つけた。

契約満了日までに更新料を支払わないとな。
家賃滞納で追い出されてしまうかもしれない。

そんな事を考えながら部屋の中へと入った。