1部屋1部屋に興味深く立ち寄っていると
タオルを持った氷彗(さん?)が戻ってきた。

「風呂、こっち。」

「あ、はい…」

単語口調に指示を受け、彼の後を追う。
先に洗面所を案内されたのは
乾燥機を使うようにという事らしい。

綺麗に掃除が行き届いた
広々としたお風呂場。

浴槽には既にお湯が張られていたから入らせてもらった。

「あー…生き返る〜」

肩まで浸かり
心地よい湯加減に冷えた体が温まっていく。
『気持ちいいなぁ』なんて
くつろいでいる場合じゃない。

今後の事を考えないと。

あの2人
いったいどういう関係性?
似ていないから兄弟ってわけでもなさそうだし。
まさか“ラブ”的なやつか?
いや…それなら女と同居はしないはず。

何にしてもどうしよ。
流れで来てしまったけど
明日はどうする?

月影さんが言ってたけど
家賃と光熱費はタダで
食事と掃除が仕事で良いという事は
これはもしかしたら
考え方によっては美味しい話なのでは?
“男と生活する”って考えると抵抗あるけど
要は共同生活をするだけ。
何も考えなければ私とすれば一石二鳥なんじゃ…

「意外と悪くないかもしれない」

ニヤリと不敵な笑みを浮かべ
さらりと考えを改め直す私は
自分で言うのも何だけど
案外、簡単・単純なんだと思う。