しばらく車を走らせ車内にも少し慣れる頃には
震えも少し落ち着いてきた。

無言なのも気まずいし
何か話をしてみようか。

「どうして私がここにいるってわかったんです?」

「んなもん簡単だろ。
 歩いて進める距離なんて、たかが知れてる。
 こんなところを歩いてる人間
 アンタくらいだからすぐ見つかるしな」

「あー…そうですか」

(ひね)くれた言い方しか出来ないのかな
この男は。

「よく迎えに来てくれる気になりましたね」

『どういう気まぐれですか』も込めて。

氷彗(ひすい)に怒られたからな」

…って、さっきの住人の事?
今初めて知るとか
名前も知らせず一緒に住まわせようとしたこの人が怖い。

「それと今回の契約の件
 俺にも少しは責任がある」

「少し…ですか。
 自覚があるのは何よりです」

『アンタが元凶なんでしょ』と
言いたい気持ちを今はグッと堪えた。
ここで捨てられたらまたリスタートになってしまうから。

「明日、詳細は説明する。
 とりあえず今日に限っては大人しくしてろ」

最後まで命令口調なのがキズだけど
雨に濡れたからテンションが下がってしまい
言う通りにする事に諦めた。



彼等の住む家に到着したのは
車を発進させてから、ただの5分ちょっと。
めちゃくちゃ長時間歩いた気がしたのに
全然だった事が何よりショック。