華恋さんの家は厳しかったみたいで
ご両親は壱琉との交際を大反対していたと話してくれた。
だから諦めるしかないと――
「俺みたいなヤツといて
華恋の将来を潰すわけにはいかない。
彼女には、ちゃんと全うな人生を歩んでもらいたくて俺は身を引いたんだ。
それも勝手に…ひどい振り方をして」
未だに忘れられない後悔が強いからか
眉間にグッと皺を寄せ
膝の上では両手の血管が浮き上がるほどの拳を握り、その時の事を思い出しているようにも見える。
それがコイツの…華恋さんに対しての
”本気で愛した証”なんだ。
「だから壱琉…
今回のことは例え嘘だったとしても
彼女のために、なんとかしてあげたかったんだ…」
『あぁ…』と寂し気に返事をする壱琉に
胸がギュッと締め付けられるように苦しくなる。
若くて未熟な2人が精一杯に恋をして
お互いの愛情が冷めたわけでもないのに
身を引かないといけないって離れる苦渋の決断をして、壱琉はそれを1人で背負ってきたんだ。
だからきっと今でも華恋さんのこと―――――
「別れてから会うことがなかったのに
2カ月前に再会した時は驚いた。
どういう顔して会えばいいか困惑したけど
すげぇ普通に接するから俺も少し安心したんだ」
『それなのに…』と口を噤む。



