”2人の知り合い”と
完全に油断していたから―――
2階から降りてきた私は玄関のドアを開け
「どちら様でしょうか?」と
ごく普通に接していたのだけど
相手の反応は、奇妙だった。
「あー…キミが蓮見詩菜って女か。
なるほどね」
私が本人だと、妙な納得した彼はフンッと鼻で笑い、更に続けておかしなことを言い出す。
「彼氏を使って華恋を襲わせたクソ女だな」
「は?」
この人は初対面の私に何を言い出したのかと
最初、理解が出来なかった。
そもそも誰が誰の彼氏?
けれどよくよく考えてみて
”華恋”の名前に急な胸騒ぎを覚え
すぐにドアを閉めようとしたが
男はガンッと足のつま先をドアの間にねじ込んでそれを阻止。
閉めない気だ。
「逃げようとしても無駄。まだ話は終わってないんだよ…っ」と語尾を強めに男は両手でドアの淵を掴み力いっぱい開け放つと、今度は私の腕を思い切り掴んで外へと引っ張り出した。
「ちょっとッ
放しなさいよッ!」
抵抗したってビクともしない。
細いくせに筋肉があるせいか
驚異的な力でズルズルと引きずり出されると
横付けにしているミニバンのスライドドアを開け
強引に押し込まれそうになる。
やばいやばい
拉致でもする気だ
「どうしてこんなことッ」
微力でも精一杯拒絶を続けていると
男は次の手を打った。



