2階の廊下の窓を拭いていた私は
衝撃的な彼の一言に手が止まってしまった。

『しばらく泊まる』って…
そう言ったように聞こえたけれど…
まさか彼女の家にしばらく住むって事?

「それって…
 どこに…」

なんとなく聞くのに勇気が必要で
よくわからない緊張に動悸を感じつつ
覚悟のようなものを携えて聞いてみるが
本人はお構いなくて。

「ホテルだ」

「ホっ!?」

まさかラブ!?
ラヴなのか!?

彼氏の《《フリ》》とか言っておきながら
実はマジなヤツだったりするのか!?
そしてすでに一緒に寝ちゃってたりする!?

「おい、バカ女。
 何か勘違いしてんだろ」

「へ?」

瞬きを忘れる勢いで愕然としながら見つめ
あらぬ妄想を脳内で繰り広げていたが
この男には見透かされていたらしい。
呆れた表情を浮かべて言う。

「どんなやらしー妄想してんのか知らねぇけど
 泊まるのは《《ビジネス》》ホテルに俺1人だ。
 ラブホじゃねーぞ」

「あ、そう…」

なんだ…
って、何で私今ホッとした!?
なぜ!?
どうしてこんなヤツに!?

「ま、彼女の部屋に泊まるかもしれねーけど」

「えッ!?」

「冗談だ」

クスリと悪意ある笑みで
とても冗談とは思えない捨て台詞だけ吐いて
彼は家を出て行ってしまった。

なんなのアイツ…



これから始まる
壱琉と華恋さんの“仮・恋人関係”

胸騒ぎしかしないーーーーー