黒色で無地のケースは壱琉のスマホ。
振動で響いていたのはどうやら着信みたいで
その相手は…

「”華恋(かれん)”…?」

女の名?
これはまさかアイツの…
壱琉の・・・・彼女か!?

「名前からしてお上品っぽそう…
 うわぁ…気になるッ」

最低な考えだけど
ものすごく通話ボタンを押したい衝動に駆られ
持つ手が震える。

だって《《あの》》壱琉に彼女だよ?
どんな人なのかメチャクチャ気になる。
顔は確かにイケメンよ、それは認める。
だけどあの性悪最低男に彼女って
どんなイチャラブしているのか想像も出来ないじゃない。

人としてイケナイことをしちゃいけない。
いや、だけど
せめて声だけ聞いてすぐ切ってしまうのもアリか…

私の中の天使と悪魔が戦っている間に
電話の相手は諦めたらしく切ってしまったよう。
画面に残るは”不在着信 1件”の通知のみ。

「チッ、間に合わなかったか」

舌打ちする私の頭の中は
悪魔が一歩リードしていたようだ。

それにしても
どうしてこんな所に落ちていたんだろかと少し考えて
今朝の会話を思い出した。


寝坊して飛び起き→急いで風呂場へ→慌てていたせいでスマホを落とした事に気が付かず会社へ→彼女からの着信

「…なるほど」

忘れるとかアイツらしくないけど
今朝のあの様子じゃ無理もないか。

今ごろ困っているかな。