自分で言いながら苦しい言い訳だけど
素直に答える必要はないはず。
「ふーん。
ま、それは信じてやるか。
氷彗と父親との事は俺もわかっているからな」
そうだった。
コイツは誰よりも氷彗の事を知ってる。
父親との確執も
それに悩んでいた事も。
「氷彗の表情が以前に比べて穏やかになったのは
アンタが何かしたからか」
「ちょっと。
私のせいみたいに言わないでよ」
確かにお父さんの事があってからか
氷彗が優しく微笑むようになったなとは私も勘付いていた。
だけどそれは気持ちの変化の現れだと思うから。
「それで?
だとしても氷彗とはどこまでヤッたんだ?」
「…は?」
真面目な話かと思いきや
ニヤリと嘲笑うこの男からは
私達の関係を楽しんでいるようにしか見えない。
「そんな事ばっか。
アンタって本当最低」
若干イラっとしながら
『もう帰りたいんだけど』と語尾を強めた。
それでも動じる事のない壱琉は
車を出そうなんて気がないらしい。
「あの家は俺の家だからな。
知らねーところでイチャイチャされんのは
黙っておけねーな。
それに俺は、アンタの裸を見ているワケだし」
「い、意味わかんない!
それとこれとは違うから!
関係ないでしょッ」
よりによって
《《あの雷の日》》の出来事を蒸し返すなんて。



