リビングへ案内すると、三和さんはそのままソファーの横へ立つ。どうやら彩響の許可を得てから座ろうとしているらしい。彩響はその行動にどうしようもないぎこちなさを感じた。以前も思ったが、本当に堅い人だ。


「あの…座ってください」

「はい」

「…それでは、改めて。峯野彩響です。これからよろしくお願いします」


座った後、自然と初めての面談が始まった。もちろんある程度Cinderella社との話は済んでいるが、雇用主として従業員にきちんと挨拶するのも大事なことだと思った。


「三和寛一です。よろしくお願いします、峯野様」

(うわ、「様」なんか付けてるよ、この人…)

「お話はMr.Pinkからある程度お聞きしているとは思いますけど、改めて確認しますね」

彩響は用意しておいた書類をテーブルルの上に広げた。

「今日から三和さんの職場はこの家になります。勤務時間は9時から18時、休憩時間1時間込みです。それ以外の時間は自由にお過ごしください」

「承知しました」

「予め相談して頂いたらこの勤務時間を調整することもできますので、何かあったら言ってください。たまに里帰りとか、そのような事情もできるかと思いますので」