天気のいい土曜日。

彩響はリビングのソファーに座り、今日来る予定の「あの人」について考えていた。

そう、世間ではちょっと珍しい…いや、かなり珍しい、男の家政夫。

とてもキリッとした印象の、洗濯と裁縫が一番得意という、あの家政夫さん。彼を選んだ時、「一応準備があるので、3日くらい荷物をまとめる時間をくれ」と言われ、許可した。そして今日がその約束の日。

彩響は水を飲みながら三日前のことを思い出した。



「はあ?!よりによってこいつかよ!何で俺じゃねーんだよ!」


彩響の選択に真っ先に反応したのは、河原塚さんだった。まるで何かの勝負に負けたかのように、すごく悔しい顔で三和さんを睨む。


「お前、これで俺に勝ったと思うなよ、覚えてろ…!」

「いや、そんなこと言われても俺は別に…」

「まあまあ、彩響ちゃんが選んだんだから、仕方無いってば。ねえ、清嵐さん?」


雛田くんが隣の今瀬さんに同意を求める。今瀬さんも雛田くんとほぼ変わらない反応を見せた。


「はは、そうですね。峯野さん、いいチョイスだと思います。寛一の洗濯と裁縫スキルはこの中で最も優れていますので、絶対役に立つのでしょう。あ、あと俺たちは会社を通じて繋がっていますので、彼だけで心細いときはいつでも連絡ください。…ほら、成、さっさといきますよ」

「放せぇー!おい、そこの女!何で俺を選ばなかったのか今すぐ100文字以内で説明しろ!」

「あーもうーうるさいよ、行くぞ!」


河原塚さんの叫び声は他の二人に引っ張られ、オフィスからどんどん遠くなっていった。一人残された三和さんは驚いた様子で、じろじろと彩響の顔を見る。なぜ自分が選ばれたのか、その理由が分からないようだ。その反応に彩響は少し心配になり、改めて確認した。


「洗濯するのが面倒でいつも困っていたから、あなたが最適だと思いましたが…もしかして都合が悪かったりしますか?」

「え?あ、いいえ、全く問題ございません。働きます」

「じゃあ、これで大丈夫かな?」

二人の間にMr.Pinkがすっと入ってきた。片手にはペンを、もう片方のは紙をパラパラしている。内容を見なくてもそれが何なのかはすぐ分かった。彩響は力強く答えた。


「はい、この人、三和寛一さんでお願いします」