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「碧?」
目の前でヒラヒラと揺れる小さな手。
「あぁ」
桜子か。
そういえば、今日は迎えに行かずに登校したんだっけ。
「何?」
いつもより冷たい言い方になったような気がする。
チラッと桜子の様子を伺うと、俺の異変に勘づいてるようだ。
「ただおはようって言いたかっただけなんだけどさ……」
桜子には心配かけたくない。
桜子は若干戸惑った表情を浮かべたけど、何事もなかったかのように話を続けてくれる。
「栗ちゃんって藤北の野球部だったんだね。全然知らなかった」
桜子は何も聞いてこなかった。
だからこそ、桜子の隣は居心地がいい。



