きらめく星と沈黙の月

事実、3回裏までは順調だった。


桜子の位置さえ把握していれば、マウンドに上がっても桜子がいるかどうかは確認できる。


どんな顔して見てるのかは分からないけど、とにかく見てくれていることが嬉しい。


ほんの数ミリだけでも、溝が埋まった気がした。


けど、そう思ったのは俺だけだったみたいだ。


4回裏、マウンドに立って桜子を確認すると、姿を消していた。


やっぱりダメだったか…。


桜子にとって、野球姿の俺は見たくない姿なんだな。


桜子にとっても苦い思い出のアレを想起させる嫌なものなんだ。


「…やべぇ」


調子が狂ってきたのがよく分かる。


投げる球がことごとく狙い通りにいかない。


ついに5回裏で、フォアボールの連続に、デッドボールを出してしまった。


打たれていないのに満塁。


控えがいないというプレジャーが重くのし掛かかる。