きらめく星と沈黙の月


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「桜はバッグネット裏の2階席の前から4列目」


ベンチで待機している俺に、藍沢が囁いた。


もうすぐ俺の打順が回ってくる。


マウンドに立ったら遠すぎて見えなくなるし、ベンチにいるんじゃ真上すぎて見えない。


塁に出るだけじゃ、観客席を見る余裕なんてない。


だったら…


「ホームランしかないな」


「え?」


「ホームラン打ってのんびり桜子を探してくる」


ホームランならゆっくり走っても問題ないから、探しやすい。


早いところ桜子の場所を見つけて、この目で確認したい。


本当に桜子が来てくれたのかどうか。


「んじゃ、行ってくる」


桜子が試合に来るのは中1以来。


俺が来るなって言ってしまったから、当然と言えば当然なんだけど。