投球数だけが増えていく。


そして、3ボール、2ストライク。


次が勝負の一球だ…。


固唾を飲んで碧を見守る。


栗ちゃんのサインに迷いを見せたが、覚悟を決めたように首を縦に振った。


大きく深呼吸をし、キャップをかぶり直す碧。


「お願い…」


祈るように手を握りしめ、瞬きもせずエースを見つめる。


呼吸も忘れて、ただ一人のエースだけを見つめていた。


大きく胸を張り、振り下ろされた腕。


そこから飛び出た豪速球は─。


空を切ったバットの後ろ、栗ちゃんが構えたミットに収まった。


その瞬間、栗ちゃんがすごい勢いで駆け出し、碧に飛びついた。


ワァァァァァァァー!!!


大歓声で揺れる球場が、私たちの勝利を教えてくれていた。