鈴宮……。


「なんてことしやがるんだ…」


ありえない。


献身的に部員をサポートしてくれていたマネージャーを、どうして襲えるんだ。


アイツがそんな小さい人間だと思わなかった。


「…わざわざ報告してくれてありがと」


「いえ。まだ続きがあります」


続き…?


「楓子は、月川という先輩に隠蔽を強要されたそうです」


「は……?」


「だから怖くて今まで言えなかった、と泣きながら教えてくれました…っ。1週間、楓子は誰にも言えずに一人で闘っていたんです…っ」


桜子が…?


藍沢と大雅と、戸惑いの視線が交差する。


「桜子がそんなことするはずがない。何かの間違いだ」


「そのセリフ、楓子の前でも言えますか?楓子は本当に傷ついてふさぎ込んでいるのに」


鈴宮の友達はキッと俺達を睨みつける。


「桜子はそんな奴じゃねぇ。それは俺が1番分かっ―」


「証拠があります。聞きますか?」


は…?証拠…?


なんだよそれ。


あの桜子が隠蔽を強要するはずが─。


『お願いだから誰にも話さないで』

『甲子園は碧の夢なの。お願いだから邪魔しないで』


大音量で流された声に、クラス中がざわめく。


「なん…だよ…これ……」


この声は間違いなく桜子のもの。