「もういいよ」


今度の声の主は、顔を上げなくても分かった。


「いくら謝られたって、甲子園には行けない」


この冷たい声は、4年前にも聞いた。


ただでさえ静かだったグラウンドが、さらに静まり返る。


「…練習しようや。まだ次の夏があるやん」


「簡単に言うなよ」


口論の火種を感じ、パッと顔を上げると、大雅に目を反らされてしまった。


「簡単になんか言ってない。ちゃんと覚悟持って言っとう」


「…あっそ」


険悪な空気が立ち込める。


碧の言う通り、謝ったってどうにもならない。


皆に迷惑をかけること以外に私にできることはない。


「…ごめんなさい……」


それでも、謝ることをやめられなかった。


「もういいっつってんだろ」


「……っ」