「5回裏で満塁ホームラン食らったのがけっこう堪えたのかもなー」


碧は伸びをしながら軽く言った。


本当は重く重くのし掛かっているに違いない。


試合前、陽菜が言った“絶対エース”の意味はこういうことだったんた。


輝かしい称号なんかじゃない。


碧を押し潰してしまう重い称号だったんだ。


自分以外に投手がいない状況で、満塁ホームラン。


どれだけプレッシャーだっただろう。


マウンドを降りることができず、全校生徒がちっぽけなエースに期待している。


どれだけの重圧だっただろう。


自分以外投げる人がいない。


だけど調子が戻らない。


打たれると分かっていても投げるしかなかった碧の心はどれだけボロボロになっていっただろう。