「ん?なにが?」


「そんなにツラい経験してるのに、隠して明るく振る舞うなんて、私にはできないよ…」


大雅は愛する人の死を乗り越えたのに、私には失恋一つ乗り越えられない。


悲しい気持ちを隠すこともできていない。


「あのなぁ、そんなん人と比べるもんちゃうで。自分のペースでえぇねん」


「…そう…かな……」


「そうそう。まっ、そのうち元気出るわ。なんせ俺がおるからな」


「……ありがと」


「そこは否定せな。つっこまな。俺が自惚れてるみたいになるやん」


重かった空間が、ふふふっと笑いに包まれる。


「なんかあったらすぐ頼りや?俺はずっと桜ちゃんの味方やからな」


大雅はさらっとそう言ってコーヒーを飲み干した。


「ありがとう、大雅。元気出た」


「ホンマか?こんなんで元気出んの?」


当たり前じゃん…?


大雅みたいな優しい人…そうそういないよ。


私も頑張ろう。


大雅が乗り越えられたんだから、私にだってできるはずなんだ。