そんな真剣な顔で私を見ないで。


「俺は絶対に約束を守る。どうしたら信じてくれる?」


そんな約束、したくない…っ。


したくないよ…っ。


「…桜子を甲子園に連れていきたい。土砂降りのなか俺を抱きしめてくれたあの日、強くそう思った」


……っ。


ツーっと頰に滴が伝う。


「絶対に夢を掴んでみせる。絶対に桜子に最高の景色を見せてやる。それまで恋愛はしない。そう、約束する」


ピタリ。


足を止めると、碧も止まった。


碧が私の正面に立ち、じっと私を見る。


慌てて涙を拭ったけど、痕までは隠せなかった。


「なんで─」


「嬉し涙だよ。ありがとう、碧。約束だよ」


また、碧への嘘が増えた。


赤く染まった川に架かる橋の上

たった今、失恋した

涙の理由も言えぬまま─…