─目の前に広がる真っ青な海。


カラッとした空気を潮風が撫でる。


「呑気に眺めてる場合じゃないよ。藤北にとって大事なリベンジマッチなんだから」


海南高校近くの海に見とれていた私の頭を陽菜が叩く。


夏休みも残りわずか。


練習に明け暮れることができる時間は限られている。


マネの私がボケッとしてたらいけないよね。


「ごめんごめん!」


「まぁまぁ、こっちがカリカリしとってもしゃーないって」


つい数日前から藤北の練習を見に来るようになった大雅が、私の隣を陣取ってはにかむ。


思い立ったら即行動だと言い、大雅はもうこっちに引っ越してきたそうだ。


碧ん家と同じで、大雅の家も自由主義らしく、一人で関東へ出ていくことを止められもしなかったらしい。