「陽菜…!」


碧が事前に買っていたスポーツドリンクとお水を引っ付かんで駆け寄ると、陽菜は碧の服にしがみついて息を荒げていた。


「齋藤先生、もうバスは無理だと思うんで、コイツだけ別で帰らせてやってくれませんか?」


私の手からスポーツドリンクを抜き取りながら、齋藤先生に話しかける碧。


その左手はずっと陽菜の背中をさすっていて、右手だけで器用にキャップを開けている。


「そうだな…。俺と一緒にタクシーで帰らせるか」


そうと決まれば、齋藤先生はすぐに車内に戻り、副顧問と話を始めた。


「藍沢、もう大丈夫だから」


ゆっくりゆっくり、優しく優しく、陽菜の背中をさする碧を見ていると、なぜだか私が苦しくなる。


陽菜が大変な時に私は何を考えているんだろう。