「……どうしちゃったの…」


碧は敬遠を嫌っていた。


自分がされたらムカつくからしないって言ってたし、敬遠は逃げだとも言っていた。


勝負する前から逃げたくない、と。


そんな碧が敬遠を選んだ。


チームを確実に甲子園へ連れていくための戦略なのかもしれない。


だけど…。


今日の碧は変だ。


見るからに呼吸が荒い。


顔も険しい。


「…碧……」


栗ちゃんも異変に気づいているのか、マウンドに駆け寄る。


そこで初めて碧は笑顔を見せた。


まるで“大丈夫だ”と安心させるかのように。


栗ちゃんの表情は分からない。


けど、あの二人なら大丈夫。


絶対に何とかなる。


「碧……っ」


碧は負けない。


藤北は負けない。


絶対に─。