藤北の打線は順調。


一人が打てば、勢いに乗って後ろが皆打つ。


大量得点こそないけど、1点1点積み重ね、4回が終わった時点で4点を獲得していた。


対する相手は、未だエース碧に手が出せず、無得点でいる。


藤北の調子は上がり続ける一方。


だけど、碧の表情は浮かなかった。


いつもの碧じゃない。


表情が暗すぎる。


それでも、投球は完璧に見えた。


「…碧……?」


いつも以上に肩で息をしている。


まだ5回表。


碧らしくない。


栗ちゃんのサインに首を横に振り続ける。


相手は4番バッター。


ランナーは二塁。


ようやく碧が頷いた。


「……え…」


碧が投げた球はホームベースから離れた緩い緩いボール球。


それを4回繰り返した。