「碧!」


家の前で、ジャーンっと突き出しのは、野球ボールを模したお守り。


縫い目は均等じゃないし、赤い刺繍もいびつだけど、正座して、丹精込めて作ったんだ。


「マジで作ってくれたんだ。忘れてんのかと思った」


「へへっ。ごめんごめん。ホントは昨日のうちに渡したかったんだけど、間に合わなくて」


結局、試合当日の朝になっちゃった。


「超嬉しい。今日は快勝だわ」


生き生きとした表情でお守りを受け取り、さっそくバッグにつけてくれた。


陽菜のと並ぶと、不格好さが増す。


でも、そんなのどうでもいいくらい、すごく誇らしかった。


「じゃあ、行ってくる」


「うん、行ってらっしゃい!」


頑張ってねとは言わない。


碧は頑張ってるから。


だから、ただ祈るだけ。


怪我をしませんように。


ベストを尽くせますようにって。