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「あ…栗ちゃんだ」


グラウンド近くの部室棟には、野球部員がたくさんいた。


けど、栗ちゃんを見つけるのに時間は必要なかった。


栗ちゃんもこっちに気づいたみたいだ。


「栗ちゃん!本当にごめんなさい!!」


「俺も悪かった。ホントにごめん」


二人揃ってガバッと頭を下げる。


しばらく無言の時間が流れる。


栗ちゃんの反応がなく、怖くて顔を上げられなかった。


「昨日は本当に悪かった。ごめん、栗」


「……頭、上げなって」


予想していたよりトゲはない柔らかな声。


顔を上げると、栗ちゃんはいつもの優しそうな顔で立っていた。


「俺の方こそごめんね、桜子ちゃん。碧の言う通り、桜子ちゃんのせいにするのは間違ってた。ごめん」